闇堕ちしたエリート医師は一途に禁断の果実を希う
 ビビッドなオレンジ色とは裏腹に、リラックス効果が期待できる上品な香りを持つアレグリアの花を見て、早咲もほぉと面白そうに見つめている。
 
「やさしい香り……なんだか眠くなってきちゃうな」
「すこし休むかい?」

 早咲の声に頷きそうになるが、慌てて小手毬は首を横に振る。
 せっかくハヤザキとオソザキが来てくれたのに、すぐに眠ってしまってはもったいない。
 それに、怖いのだ。眠りについたら、もう二度と目覚めることが叶わないかもしれないから。
 意識を失っていた空白の二年間のように。
 
「まだ、おはなししたい、です」

 小手毬が涙ぐみながら訴えれば、ふたりは柔らかく微笑んだ。
 どこか困ったような表情にも見えたけれど、それはきっと、気のせい……
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