人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています
「あ、あの……この格好でお話するのですか?」
恐る恐る訊ねると、ヴァルクはなぜかイレーナの顔を撫でた。
「ひあっ!?」
イレーナの脳内は大パニックを起こしている。
「可愛いやつだな。まるで猫のようだ」
「は? 猫でございますか?」
「ああ、俺は猫が好きだ」
「わ、私も大好きですわ」
「なんだ気が合うな」
「そうでございますね!」
「こうするとよく鳴いていたな」
ヴァルクはイレーナの耳から首筋まで指先ですうーっと撫でる。
「ひゃあぁ……!」
イレーナは覚悟した。
嫁いでわずか1日しか経っていないのに殺されるかもしれないと。
それでも、騒がずにはいられないのだ。
狼狽えずにはいられないのだ。
(ああ、お母さま。約束を破ってごめんなさい。こんな拷問、耐えられません!)
せめて爪を立てないように、拳を握りしめる。
しかし、すぐにヴァルクが気づいてイレーナの手を握った。
「無駄に力を入れると手が壊れてしまうぞ」
「そんなことは……」
(普通に生活していたらそんなことは起こりません!)