人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています

「あ、あの……この格好でお話するのですか?」

 恐る恐る訊ねると、ヴァルクはなぜかイレーナの顔を撫でた。

「ひあっ!?」

 イレーナの脳内は大パニックを起こしている。

「可愛いやつだな。まるで猫のようだ」
「は? 猫でございますか?」
「ああ、俺は猫が好きだ」
「わ、私も大好きですわ」
「なんだ気が合うな」
「そうでございますね!」
「こうするとよく鳴いていたな」

 ヴァルクはイレーナの耳から首筋まで指先ですうーっと撫でる。

「ひゃあぁ……!」

 イレーナは覚悟した。
 嫁いでわずか1日しか経っていないのに殺されるかもしれないと。
 それでも、騒がずにはいられないのだ。
 狼狽えずにはいられないのだ。

(ああ、お母さま。約束を破ってごめんなさい。こんな拷問、耐えられません!)

 せめて爪を立てないように、拳を握りしめる。
 しかし、すぐにヴァルクが気づいてイレーナの手を握った。

「無駄に力を入れると手が壊れてしまうぞ」
「そんなことは……」

(普通に生活していたらそんなことは起こりません!)




< 17 / 177 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop