人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています
王や上級貴族はだいたいそうするのが。
ヴァルクはけろりとした顔であっさりと返した。
「そんなことは考えたこともない」
「え? で、でも……私はこの身体であなたの相手をするのは……」
「何だ、そんなことを気にしていたのか。大丈夫だ。こちらのことは何とでもなる」
「えっ……何とでもって」
ヴァルクはイレーナにそれ以上言わせないように、力強く断言する。
「お前以外に女を娶るつもりはない!」
「ええ? それは、側妃を置かないということでしょうか?」
「ああ、そうだ。何か不都合でもあるか?」
「だ、だって、この国は一夫多妻では……」
「そうらしいな。俺の祖父までは多くいた。だが、俺は興味がない」
「は? はぁ……」
皇帝がたったひとりの妃しか迎えないのは、娘を嫁がせたい貴族たちの反感を買うことは必至だ。
しかし、ヴァルクははっきりとイレーナに言った。
「俺は昔からひとりの女一筋なのだ。俺の命を救って、俺を正しく導いてくれた女だけが俺の妃だ。今後は他の妃を置くつもりはない」
イレーナがほろりと涙をこぼすと、ヴァルクは彼女を優しく抱きしめた。
不安なことが一気に解消したイレーナは心の底から安堵し、穏やかな気持ちになった。
部屋の外からそっと覗いていたリアとテリーとその他大勢は、声をひそめながら感動に涙していた。