人質として嫁いだのに冷徹な皇帝陛下に溺愛されています
イレーナは出来るだけ自分で子育てがしたかった。
それは自身の実家であるカザル公国がそうしていたからだ。
帝国では当然、子は乳母が育てるもので、妃は一切子育てをしない。今まではそうだったらしい。
だが、イレーナは自分のやり方で皇子を育てたかった。
ヴァルクもそれを許してくれた。
「そうすれば、お前のように聡明な人間に育つだろう」
とヴァルクは言った。
イレーナ付きの乳母はあくまで助言と手伝いをしてくれるという立場だった。
それでもイレーナには正妃としての仕事もあるので、同時にこなすためには助けが必要不可欠だった。
リアはとてもよく世話をしてくれた。
使用人たちはみんなで皇子を可愛がった。
穏やかな日々が続くある日。
久しぶりにヴァルクは休暇を取り、その日はイレーナも侍女に皇子を預けて、ふたりで王宮庭園を散策した。
ふたりとも激務でほとんど眠れない日々を過ごしているので、ふたりだけの時間を作ることも難しかった。
だが、今日はイレーナの誕生日。
ヴァルクはこの日をイレーナと過ごすために日々の激務をこなしてきたようなものだ。