再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。
 でもリューは私の表情を見て何かを察したらしかった。

「奴と何があった?」
「な、何もありません!」
「コハル」

 完全に据わった目をして近づいてくるリューから一歩後退った、そのとき。

「コハル様、殿下、どうかされましたか?」

 ノックと共に扉の向こうから心配そうなローサの声が聞こえてきて焦る。

「と、とにかく早く戻ってください! 変に思われるじゃないですか!」

 小声で言うと、リューは扉の方についと視線をやってからふぅと息を吐き、少年の姿に戻ってくれた。
 一先ずほっとして鍵を外し扉を開けるとメリーがすぐに部屋の中に飛び込んできた。

「コハルさま大丈夫でしたか!?」

 そしてメリーはギっとリューを睨みつけた。

「だ、大丈夫って、何にもないよ。ごめんね、ちょっとこれからの話をしてて」

 ローサの手前、何でもないふりを装って私は笑う。

「……」

 小さなリューがぶすっとした顔でどっかりソファに腰を下ろすのを見て、私はこっそり溜息を吐いた。

(また改めてちゃんと説明しなきゃなぁ)

 説明と言っても、本当に何もないのだから説明しようがないのだけど……。


 そんな前途多難な状況の中、私たちを乗せた船はその日の昼過ぎに砂漠の国に到着したのだった。


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