再びの異世界、可愛かった皇子様が俺様竜帝陛下になってめちゃくちゃ溺愛してきます。
一際大きな咆哮が聞こえて、私はハっと目を開ける。
――今のは……?
でもそのとき、リューが勢いよく頭を振り上げた。
その拍子に、私の手は彼から離れた。
そのまま私の身体は落下していく。
まるでスローモーションを見ているようだった。
皆の悲鳴が聞こえて、メリーが急いでこちらに飛んでくるのが見える。
でもきっと間に合わない。
このまま地面に叩きつけられたら無事ではいられないだろう。
覚悟を決めた、そのときだった。
「――っ!」
私を優しく受け止めてくれたのは、大きな手だった。
ひんやりとした、でもあたたかい竜の手。
顔を上げると、私を見下ろす大きな優しい金の瞳があった。
「リュー?」
―― コハル ――
その大きな口が少しだけ開いて、いつもの彼の優しい声が聞こえた気がした。
彼が戻ってきてくれたのだとわかって、私は、私を守ってくれたその大きな手を力いっぱい抱きしめた。
『 馬鹿な! 完全に余の傀儡となっていたはず! 』
「まぁなんというか、愛の力ってやつじゃないかな?」
魔王の絶叫とエルのそんな楽しそうな声が聞こえてきて、まだ終わっていないのだと私は気を引き締めた。
リューの手のひらの上でしっかりと立ち上がり、赤い眼をした魔物を睨み据える。
「魔王。あんただけは絶対に許さない」