偽る恋のはじめかた
部署の違う彼女のことは、毎日少しずつ情報を集めていった。
人事部に所属していること。
人当たりが良く他の社員から好かれていること。
男性から、とんでもなくモテること。
家族構成や趣味など、集められるだけ情報を集めて1冊のノートにまとめた。
もちろん、情報を集めると言っても、犯罪にはならない合法的な方法だ。
ただ、1冊のノートにまとめられるほどの情報を調べたとバレたら、ストーカー疑惑が持ちかけられるので、このことは誰にも言わずに墓場まで持って行こうと思う。
なにも行動に移せないまま1年が過ぎた頃、次の人事異動で他の部署の課長のポジションを任される話があがった。
自分の能力を評価され、嬉しい話だった。
同時に自分の実力で役職を全うできるのかという不安も感じた。
他部署ということもあり、その部署の実務的な業務に関してはまったくの未経験。「他に適任がいるのでは」と1度はやんわりと断った。
しかし、配属される部署が人事部と聞いて、
断りをすぐに撤回した。
人事部には、一目惚れした雨宮梨花さんがいると知っていたからだ。
不純な動機で笑ってしまうくらいだったが、
それでもいいと思った。
これで密かにずっと思い続けていた雨宮さんと
接点ができると思ったからだ。