偽る恋のはじめかた



音がした方に視線を向けると、桐生課長がデスクに手をついて、身を乗り出してこちらを見ていた。


勢いよく立ち上がったのかイスが倒れていて、大きな音の正体はイスが倒れた音のようだ。


そして、あれは見ているじゃない。
……凝視している。


な、なに?
怖いほどに見られてる。




「椎名さんっ!!・・・・・と黒須くんは、一緒にランチ行ったのかい?」

「そうすよ、うまかったっすね」

大きめの声を発しながら、私たちに距離を詰めてくる。


ランチ行けなかったこと気にしてるのかな。

確かに、桐生課長とランチに行かないのに、黒須くんとランチ行ってきたっていうのは、少し気まずい気がする。


申し訳なさと、距離を詰めてくる桐生課長の気迫にたじろぐ。

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