偽る恋のはじめかた








仕事が終わると外で待ち合わせをして、私の家に桐生課長が来ることになった。


一度だけ部屋に来たことはあるけど、あの時とは状況が違う。そわそわして落ち着けなかった。



玄関ドアを開けると、まずゴミ袋が顔を出す。そして鼻を刺す異臭もおまけでついてくる。

さすがに気まずくなり、今日は解散にしようと心に決めた。





「……あのっ、桐生課長がくるってわかってたら、ゴミ捨てたんですけどね?・・・・・・本当に汚いので、やっぱり今日は、やめ・・・・・・っきゃ、え、」



私の言葉の途中で、後ろからぎゅっと強い力で包まれた。私よりだいぶ長身の桐生課長の身体に、すっぽりと収まってしまう。


「……っ、き、桐生課長?」

「…早くこうしたかった。仕事中、ずっと我慢した…」



後ろから抱きしめられながら、耳元で聞こえる甘く響く低い声。今まで聞いたことのないような、艶気を帯びた声がやけに耳に残る。


静寂な部屋で、彼に聞こえてしまうのではないかと思うほど私の心臓の音が鳴り響く。


背中に感じる彼の体温と彼から零れる色気に、心も身体も熱くなるのが分かった。



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