偽る恋のはじめかた
「今、いい案が浮かんだんだけど、独特の臭い匂いのシャンプーに代えるのはどうかな?嫌な匂いのする男って、女子嫌うだろ?」
あー、もう!
こういうことを本気で言っちゃうんだもん、
愛を感じずにはいられない。
訳の分からない提案に愛を感じる自分もおかしくて、自然と顔が緩む。
「……それは困ります。桐生課長の甘い香りが好きなのに」
「え、あっ、ええ?!……さーちゃんが俺の匂い好きなんて嬉しい、って違うか。……別な方法を考えるか……」
「他の女子社員に嫌われる方法は、もう考えなくていいです……」
「さーちゃんの頼みならなんだって……」
「その代わり……私だけを見てくださいね?」
「……っ、」
返事の代わりに強く抱きしめられた。
私の好きな彼の甘い香りがふわっと鼻に残る。
「かわいすぎる。……あたりまえだろ、さーちゃん以外は見えてない」
「……知ってる」
不器用な愛はとびきり甘くて。
こんな愛おしさを知ってしまった私は、
今も、これから先も……
きっと、桐生課長しか好きになれない。
彼も、そうであったら嬉しい。
目の前の彼の笑顔を見ると、
今だけは……同じ気持ちなんじゃないかと
自意識ながらにそう思った。
⋆⸜ 番外編 end ⸝⋆


