偽る恋のはじめかた
「・・・・・桐生・・・課長?」
心配して駆け寄ってきてくれたのは、好きな人と楽しく飲んでいるはずの桐生課長だった。
「・・・・・なん・・・で?」
気持ち悪さでいっぱいの中なんとか声を絞り出した。
「なんでって、椎名さんが心配だからに決まってるだろ」
「いや、でも・・・・・」
「青白い顔の椎名さんが席を立つのが見えたから心配になって、追いかけてきたんだ。体調悪いのか?」
私よりだいぶ身長が高い桐生課長は私と同じ目線になるようにしゃがんで目線が同じになり、しっかりと目が合った。
(桐生課長の瞳って淡褐色なんだ・・・・・。近くで見ると吸い込まれそう)
ボーッとする頭でそんなことを考えていると、
「大丈夫じゃないみたいだな」
ポツリと囁くように言った後、ふらふらの私の体を支えてくれた。香水なのか、シャンプーの香りなのか、淡い匂いがそっと鼻に残った。