偽る恋のはじめかた
「はははっ。確かに戻ったら雨宮の隣は、誰か座ってるだろうね」
「分かってるなら、一刻も早く戻ってください。」
「確かに雨宮(梨花)さんと喋れたことは嬉しかったけど、それよりも体調が悪そうな椎名さんの方が気になったから」
少し悩んでいるような顔をしながら、ゆっくり話し出した。
「今日はもう帰った方がいい。
心配だから、俺が送っていくよ」
そう言うと私の肩を支えながら歩き出す。
「ちょ、ちょっと待ってください。
私一人で帰れますから・・・・。桐生課長の歓迎会なんだし、主役が帰るなんて・・・・・」
こんな時でも理性があり、仕事モードが抜け切らない。
「いいんだよ。飲み会なんて、上司がいない方が盛り上がる」
目を細めながら笑う彼の表情に、私の心は揺さぶられる。