世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
パンプスを鳴らしながら小さくなっていく女の後ろ姿を眺めながら、俺は開いた口をようやく閉めた。

「な……何だよ、変な女っ」

俺は思わず舌打ちしそうになって慌てて口元を押さえた。あの日以来、俺がクセだった舌打ちをするコトをやめてからもう十年だ。ここまできたら一生しないと決めている。

(まさか俺が女の言ったコトをここまで聞くとはな)

俺はふと雲ひとつない青空に目をやった。なぜだかさっきの女があの日の女に重なる。

「あの女どうしてんのかな……」

昔話に出てくるお姫様みたいな名前の女にもう二度と会えるとは思ってないが、俺がここまで人様の言うこと、ましてや女の言うことを聞いたのは初めてだった。褒められて然るべきだと思うのは俺の独りよがりの我儘だろうか。

「はぁ……それにしても朝からツイねぇ。あんな訳のわかんねぇ女に時間取られるわ、説教されるわ……この俺に説教するとか何様なんだよっ」

歩みを早めながら、手に持っている鞄から伝わる振動に気づいた俺は鞄の中のスマホに手を伸ばした。液晶画面に浮かんでる相手は『ボス』。

「めんどくせぇ……」

チャリン……。
(え? )

見れば取り出したスマホと共に五円玉がアスファルトに転がっていく。

「おっと……」

俺は思わず革裏で五円玉を止めた。ゆっくりと足を上げれば五円玉がちゃんと寝そべっている。

「何だよっ。あの女の五円玉、俺の鞄にも入ってたのかよ」

俺は震え続けているスマホの電源を落とすと、五円玉に背を向けて颯爽と駅へ向かっていく
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