世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
「好き。梅子さんが好きだよ。なんで俺のこと好きになってくれないの?」

その声色と言葉に苦しくなる。世界の高い体温が身体中を包み込んで、甘い言葉がハチミツのように全身にとろりと纏わりついていき、気づけば私は世界の背中に手を回していた。

「世界くん……私ね……」

喉の奥につっかえていた言葉がすぐそこまで顔を出している。自分が今から世界に何を言おうとしているか分かる。それはきっと言葉に出したらきっと歯止めが効かない。戻れなくなる魔法の言葉だ。

「……梅子、さん……俺」

「え?……」

ふいに私に覆いかぶさっている世界の重みがぐっと増した。

「えっと?……世界、くん?」

首だけ世界に向ければ、世界の瞼はとろりとしてもう瞳を閉じてしまいそうだ。

「……早く……俺のこと……好きになって……」

それだけ言うと世界は安心したような顔をこちらに向けて規則的な呼吸を繰り返し始めた。その可愛らしい寝顔を見ながら、世界が寝落ちしたことを確認して私はようやく大きく呼吸を吐き出した。


「ばか。これ以上……好きにさせないでよ……」

自分を誤魔化すことへの限界は近いのかもしれない。世界に見つめられて触れられたら自分ではコントロールできなくなる程に世界の差し出した掌を掴みたくなる。

(もっと年が近かったら良かったのに……もっと自由にもっと同じ目線で恋ができたらどんなに良かっただろう)

私は世界を起こさないようにそっと唇に触れた。


「……もう好きだよ」

世界に直接言えることはあるのだろうか。

世界から真っ直ぐに思いを向けられるたびに、このまま一緒に居ても違う未来を見ている気がしてどうしても踏み出せない。私は世界の背中をぎゅっと抱きしめた。

「……あったかいね」

そのまま世界の体温に身を任せながら、私は急激に重たくなった瞼を閉じた。
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