世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
俺はコトコトと家で煮込んだカレーの鍋をキッチンに置くと、無用心に玄関の鍵を開けたまま、ベッドで眠っている梅子の寝顔を見つめた。

「鍵くらいしてよって、そのおかげで俺入れたんだけどさ……」

梅子の部屋を出てから、何度かLINEを送ったが途中から既読にならなかったのが心配でこうしてアポなしで来てみたが、ベッドの脇にスマホと一緒に置きっぱなしの釣書を見て、すぐに梅子が俺に返事をしなかった理由を察した俺は大きなため息を吐き出した。

「分かりやすいっすね、その方が助かりますけど」

そっと梅子の頬に触れる。

「……ねぇ、早くさ、あの日の約束早く思い出してよ。俺は……梅子さんのこと本気だから。もう一度会えたらってずっと心のどっかで願ってたから」

でも──結婚か……。

正直、いますぐ梅子と結婚できるかと問われたら答えはNOだ。でもそれは梅子と結婚したくない訳ではなく、梅子の為にだ。

「今俺、まだ何にも持ってないからさ。陶山の血しかない。早く大人になって、仕事でも成果を上げて、男としても人間としても成長して梅子さんが安心して俺と添い遂げたいと思ってもらえるまで……待っててって言ったら俺から離れるの?」

梅子の静かな呼吸音を確かめながら、そのまま長い黒髪をすくように撫でた。

「んっ……あ、れ」

梅子のまつ毛が上下しながら、瞳の中に俺が映った。

「ごめん……また起こした?」

「えっと……世界くん……?」

俺は慌てて起き上がった梅子をぎゅっと抱きしめた。
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