世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
「あっ!……梅将軍っ!お待ちしてましたっ」

扉が開けば目の前に明菜が紙の束を持って待っていた。

「んんあむんんーんふ」

「え?御堂くんなんですか?」

「あっ、おはようございますって言ってる。で、えっと……どうしたの?そんなに慌てて」

私が世界の口元から手を離すと、世界が不機嫌そうにしながらも私から距離を取った。明菜がすぐに頭を下げる。

「梅将軍申し訳ありません!」

「えっと明菜ちゃんどうしたの?」

見ればいつも冷静な明菜が取り乱した様子で一枚の見積書を私に差し出した。世界と私は見積課に歩いて向かいながら一緒に図面をのぞき込んだ。

「それが、今、経理課から連絡あって、以前私が作成した見積内容に不備が見つかって」

「え?経理課?営業課通り越して?」

「はい、安堂不動産が新規で建てた単身者用マンション『メゾン・ド・ミャー』に納品するトイレ・タンクのセットなんですが。合計90セットで見積してたんですけど、図面から算出したときは96セットで図面に書き込みしてたんです……見積書作成する際に見誤って間違った個数入力してしまったみたいで……本当に申し訳ございません……」

明菜の声が震えてだんだんと小さくなっていく。

「つまり、すでに納品して売り上げ計上しようとしたタイミングで6セット分のトイレセットが足りないって現場の施工業者から連絡があったってこと?」

「おっしゃる通りです……施工業者が本日中にトイレの施工終わらせたかったみたいで、非常にご立腹で……申し訳ありませんすべて私の責任です。このような初歩的なミスで会社と源課長にまでご迷惑おかけすることになってしまって……」

「明菜ちゃんのせいじゃない。どの見積書も最終確認は私がしてるのに気づかなかった私の責任だから」

「そんな……」

「大丈夫よ、ちょっと待っててね。御堂くんは先週の見積の続きしてて」

「承知いたしました」

私は安心させるように明菜の肩を叩くとすぐにデスクのパソコンの電源を入れる。世界もパソコンを立ち上げると何やら検索を始めた。
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