世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
「あ、あの殿村」

「梅子、少し二人で話そう」

「あ……えっと」

「ちょっと待てよ」

俺は梅子の掌を掴みなおした。

「業務時間外だし梅子さん()で俺らいまから飯だから」

殿村は片眉をあげると鼻で笑った。

「いちいちそんな子供みたいな嫉妬をされて梅子も大変だな。ちなみに業務のことじゃない。梅子と個人的な話しがあるってるんだ」

「そんなこと言われなくても分かってる。俺の彼女にちょっかいかけんなって言ってんだよっ」

梅子が繋いだ掌をそっと離し俺を見上げた。

「ごめん、御堂くん先に家帰ってて」

(また御堂くんかよっ)

俺は梅子の腰を抱き寄せた。

「嫌だっつったら?」

「何するのよっ……殿村と私も話したいから!これやめて!」

梅子は俺の腕を叩き落とすと距離を取った。

「なんだよ、それっ!」

業務時間外にそれもプライベートな話を恋人である俺を先に帰らせてまで、話すことがあるなんて、おかしいんじゃないのか?

「ごめんね……」

梅子は小さな声でそういうと殿村の隣に並んだ。

「決まりだな。梅子あそこで話そう」

殿村がマンションの中庭の方を指さすと二人はすぐに歩き出す。

(くそっ……)

俺は目の前に転がっていた小石を蹴り飛ばす。たまたま目の前のごみ箱に当たってカンッと大きな音が鳴った。梅子は殿村に何の話があるんだろうか。梅子の殿村を見る目が以前と違った気がした。

(俺のこと好きだって言ったくせに)

正直、殿村と梅子を見るたび不安になる。梅子が殿村を選ぶんじゃないかと気が気じゃない。あの落ち着いた佇まいや物腰の柔らかい口調、経済力に包容力、社会的地位、今の俺よりも遥かに殿村の方が梅子にお似合いだと思う。

「……俺じゃダメかよ……」

俺は小さくなっていく二人の姿を見ながらきつく拳を握りしめた。
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