世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
「持ってるよ……でも大事な人が困ってるときに駆けつけて助けられないんじゃ意味がないかな」

私は返事がでてこない。
殿村の言う大事な人が私だということ、今日殿村は残業帰りに私を心配してずっとマンション前で待っていてくれたこと。それでもここ数日でもう私の気持ちは固まってしまった。今まで気づかないフリをしていたがもう自分を誤魔化したくもないし、なによりも世界の真っ直ぐな想いに応えたい。

だからどうしても殿村の想いには答えることが出来ない。

「……そんな顔されると困ってしまうな」

二人の間に流れた沈黙を先に破ったのは殿村だった。

「そんなに子犬君が気になるのか?」

私は顔を上げると殿村と視線を合わせた。

「ごめんなさい……あの、この間の返事なんだけど……」

「うん……」

殿村は目を下げると私の言葉の続きを静かに待っている。私が何気なく言った言葉をずっと覚えてくれていて、ずっと私の気持ちを大事にしてくれていた殿村に対して何も思わないかと言えば噓になる。世界と出会っていなければもしかしたら殿村が差し出してくれた掌を、私は掴んでいたんじゃないだろうか。

「私ね……御堂くんが……好きなの。だからと殿村とは付き合えない……」

「それは本心?御堂に弱みを握られてるんじゃないのか?」

確かに始まりはそうだった。いきなり世界から強引に言い寄られて、ベッドでの写真をきっかけに私たちは契約交際を始めた。
< 141 / 291 >

この作品をシェア

pagetop