世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
「見積課の皆さん、おはようございます。今日も頑張ってるね」

パソコンと電話応対の声しかしなかった見積課の事務所内のあちこちから悲鳴が聞こえてくる。そして総勢五十名の見積課の女性社員の視線は一気にハートに変わる。私はあえてそちらを見ないままパソコンを打つ指先を早めた。

(最悪……こいつが此処までやって来るのだからどうせ急ぎの案件だ)

男は迷わず私の課長席までやってくるとデスクに手を突いた。

「梅子おはよう」

「おはようございます。営業第一エリアグループの殿村伊織(とのむらいおり)部長」

私はちらりと殿村を見上げて直ぐにパソコン画面に視線を戻す。

「梅子は朝からつれないね、また怒ってるの?」

「あのね、怒りたくもなるでしょ。あんたがわざわざ見積課に来るってことは今日中に上役に確認して直ぐに商談に入れる決済承認済みの見積書の作成依頼でしょ!?」

殿村は形のよい薄い唇を引き上げると私のデスクにバサッと図面を置いた。見れば都市開発として駅のすぐそばに大型商業施設の建設が決まったと小耳に挟んでいたが、その商業施設の平面図だ。

「さすが梅子。悪いけど同期のよしみで、この商業施設の見積書最優先で作成してくれないかな?」

「お断りよ!大体今日は新入社員研修もあるし、他の部署からの見積依頼だって山ほど来てるのよ!殿村のまでうけたら残業確定じゃないっ」

「いいじゃん、どうせ今日は金曜だけど予定ないでしょ?僕も営業おわったら事務所戻って来るし手伝うし」

「嘘ばっかり、いつもそう言ってて事務所帰ってきてもすぐ帰るくせに」

「梅子が僕がいると気が散るっていうからじゃん」

「そりゃそうでしょ、目の前で私が見積作るのじっと眺められたら気が散ってしょうがないわよっ」

顔を上げれば、髪と同じで色素の薄い茶色の瞳を細めると殿村が首を傾けた。
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