世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
「以上で、営業第一エリアチームが主に扱っているわが社の看板である衛生陶器の便器・タンクそしてウォシュレットについての商品説明を終わります」

マイク片手にTONTON株式会社の主力商品についての説明を終えると男が生真面目にお辞儀をする。研修会場は盛大な拍手に包まれた。

(こいつか、ボスの言ってた殿村伊織ってのは……)

俺は長机でノートにメモを取りながら、くるりとボールペンを回した。

殿村はくっきりとした二重瞼に柔らかい物腰、高身長、高学歴、おまけに会社の花形である営業第一エリアチームの部長だ。事前に組織図で調べたが今年確かまだ三十五歳だったはずだ。地毛なんだろうが、色素の薄い茶髪と薄茶色の瞳はハーフにも見える綺麗な顔立ちをしている。

(コイツがボスのお気に入りか……気に入らねぇな)

「では、次の見積課の講義は、課長の源が来るまで五分休憩と致します」

殿村はマイクを置くと颯爽と研修会場をあとにする。すでに新入社員の数十人の女の目があっという間にハートになっていた。

(もっとぶっさいくなヤツだったらよかったのに顔も良いのかよ)

「面白くねぇ……」
俺はボールペンをぽいと放り投げた。

「せーかいっ」

後ろから甘ったるい声と香水と共に花田心奈(はなだここな)の腕が絡みついてくる。あまりにも面倒で俺は視線だけを心奈に向けた。今年の新入社員はちょうど百名。研修会場の長机にあいうえお順に座らせている新入社員の何名かが俺たちの方をチラ見した。

「何? 」

「今日も好きー」

(あり得ない、マジでネジ一本足りねーな)

「いま新入社員研修の五分休憩だろ、女はトイレでもいけよ」

「世界が一緒に来てくれるなら行くー」

俺は盛大にため息を吐くと今度は視線だけで心奈の大きな瞳を睨んだ。

「マジで、いいかげんにしろよ。てゆうか何で職場まで一緒なんだよ!」

俺と心奈とは幼稚園から大学まで同じエスカレーター式の学校に通っていた時からの腐れ縁だ。

「そんなの世界が好きだからに決まってるじゃん」

「よく、就職許してもらえたな。あの安堂(あんどう)不動産と並ぶ大手中の大手、花田不動産の一人娘のくせに」

心奈は俺から手を離すと、今度は目の前に回り込んでしゃがむと俺と視線をばっちり合わせてくる。

「パパに頼んで世界と同じ職場にしてもらったんじゃん。見積課じゃなくて営業サポート課だけど。あ。ちなみにパパも花嫁修行しておいでって」

「花嫁修行とか他の男の為に他でやれっ」 

「ひどい……パパも大賛成だし、勿論陶山社長からもお墨付きもらったもん」

ボス(陶山社長)のやつ、また勝手に……)
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