世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
「迷惑なんかじゃないから……この間のことも謝りたいし」

『謝んの俺の方だから……梅子さんは何も悪くないから』

「そんなことない……私いつも素直に言えないから……」

『俺は……そんな梅子さんも全部好きだよ……頑張りすぎなところだけが心配だけど。俺……頼りないと思うけど、梅子さんのことまるごと受け止めたいって思ってるから……俺にだけは隠し事しないで?』

あっという間に視界に膜が張って、涙を落としても落としてもまた直ぐに膜が張る。

スマホ越しに世界の困ったような吐息が聞こえてくる。

『やっぱ泣いてんじゃん……なにがあった?何か言われた?心奈に何かされた?』

「……大丈夫だ……から」

自分で言葉に吐いて自分が苦しくなる。
どうして素直に言えないんだろう、今すぐ会いに来てって、こんな簡単な言葉を口にできないんだろう。

『……あ、ごめんフライトの時間だ。帰ったら必ず行くから……泣かずに待ってて。大丈夫だから』

一方的に切られたスマホからは話中音が聞こえてくる。私はその話中音をしばらく聞いてからマナーモードにすると静かにスマホを裏返した。

そして片手を耳に当てる。


──『大丈夫だから』


世界の声がまだ耳もとに残っていて、さっきまであんなに哀しかった心も涙もそっと寄り添って気づけば世界が半分こにして攫ってくれていることに気づく。

私は袖で涙を雑に拭うと、見積の図面をじっと見つめた。

図面には細かく書き出しがしてあり、数字の拾い出しもできている。おまけにこの三週間毎日向き合った見積だ。暗記している部分もたくさんある。

「……泣いてる場合じゃない……まだ勝負は終わってないじゃない……」

私は新規のエクセル画面を開くと直ぐに指先を動かした。
< 197 / 291 >

この作品をシェア

pagetop