世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
──屋上に来たのは久しぶりだ。手元の時計はまだ指定された時間よりも30分早い。いまはちょうど、社内はお昼休憩だがとても食べる気になれなかった私は早めに屋上へやってきた。
空は目が覚めるような青色が広がっていて、今日は雲一つない。LINEニュースでは夜から下り坂だと言っていたが本当に降るのだろうか。
(いっそ土砂ぶりになればいいのに……)
何を視界に映していても、驚いた顔の由紀恵と、嬉しそうに早速世界に報告に行った心奈の嬉しそうな顔が交互に浮かんで直ぐに涙が滲んでくる。
私は手元に抱え込んでいるジャケットを見つめた。勝負に負けたということは世界と別れなければならないということ。分かっていたはずなのに、あの時はどうしても自分に嘘がつけなかった。
あそこで嘘をつけばきっといつか後悔しそうで、自分自身が許せなくなる気がしてどうしても本当のことを言わずにはいられなかった。
「負けたんだよね……なんで私って……」
「馬が好きだからって……馬鹿正直にも程がありますね」
背後から投げかけられた言葉と声に身体がぴくんと反応する。その声を直接会って聞くのは六日ぶりだが、もっと聞いていなかったように感じ、会ってなかったような錯覚を起こす。私は振り向けずに両腕を手すりに預けたまま俯いた。
世界はすぐに私の隣に並ぶとこちらをじっと見た。
「全部聞いたから。そもそも俺、賭け事の景品じゃねぇし」
「……でも……どうしても交際を認めて欲しかったの……傍にいていい理由が欲しかった」
声が震えている。世界が視線を合わせようとしない私を見ながら、小さくため息を吐いた。
「なんであんなこと言ったの?」
「心奈さんから聞いたの?」
「いやボスから聞いた。全部。てゆうか……そろそろこっちむいて」
世界の掌が頬に触れる。その温かさにほっとして無意識に涙が転がる。
「ごめん」
「……え……?」
世界がすぐに私から掌を離すと頭を深く下げた。