世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
もう19時か……。
今日は時間の感覚がほとんどといってもいいほど感じられなかった。時間だけじゃない。心も身体もひんやりとして温度を感じない。
しんと静まり返った見積課で、私は殿村から依頼されていた見積を印字すると課長印を押した。屋上で世界と別れ話をしてから、すぐに俯きそうで哀しくてやるせなくて何度涙を我慢したのか分からない。
(殿村がこの見積り取りに来たら……思い切り泣こう)
そんなことを考えながらも、涙は自分の意志とは関係なしに瞳からじんわり滲みだしてくる。
「もう……大人なんだから……もう少しだけ泣くの我慢でしょ……」
見積書に一粒丸いシミができて、私は慌ててテッシュで拭き取る。
「見積書汚すなんて……プロ失格……ひっく……」
──ガチャ
扉の開く音につられて視線を上げればまた一つ涙が転がった。
「梅子どうした?」
直ぐに殿村が駆け寄ってきて私は慌てて袖で目じりを拭った。
「あ、これ完成したから。ちょっと濡れてるけどすぐ乾くと思うし……やっぱ印刷しなおそっか」
私が再度コピーしようとマウスに手を掛けると直ぐに殿村が私の手元の見積書を取り上げた。
「これでいいよ。ん?このまるいシミ……」
「いや……あの目がかすんじゃって、何か涙もでやすいし、年だよね。もしかして老眼かな。あ、ドライアイか疲れ目?」
聞かれてもいないことをペラペラと話していないと、また次の涙はもうそこまで来ている。
「……困ったな」
「え?……」