世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
──インターホンを押せばすぐに扉が開かれる。出迎えた心奈は上下スウェット姿で洗い立ての甘い髪の匂いがした。

「世界遅かったのね、もう来てくれないかと思って……源課長異動の件、社長に電話しようとしてたとこよ」

「そんなこと……心奈はしねぇよ」

「え?」

「どんだけ長い付き合いだとおもってんだよ」

心奈は確かにわがままで打算的なところもあるが人を陥れたり、悪口を言ったりするような奴じゃない。どちらかと言えばバカがつくほどに自分に正直な奴だ。そんな心奈が人を、ましてや梅子を陥れるような真似をするとしたらそれは心奈のせいじゃない。俺のせいだ。


「今日は……大事な話があって……最後に来た」

最後という言葉に、心奈の顔に直ぐに緊張が走ったのが分かった。

「……こっちで話しましょ」

心奈はそのまま俺を誘導するようにリビングへ向かうと隣の寝室へ入りベッドに腰かけた。寝室は電気がつけられておらずリビングから差し込む光だけで部屋全体は仄暗い。

「隣座ってよ」

「心奈」

咎めるように名前を呼んだ俺の目の前まで心奈がくると、俺の腕を引っ張った。

「今日は正式な婚約記念日なんだから……ベッドでお祝いしよ?」 

「今日は大事な話だけしにきた」

「話は……あとで聞くから」

「心奈、俺は……」

「世界っ……」

心奈は俺の言葉を遮ってベッドに引き倒すと、俺の体に跨った。そしてすぐに心奈はスウェットの上を脱ぐとブラのホックも外してベッドサイドに放り投げた。暗闇に真っ白な心奈の身体が浮かびあがる。

「……久しぶりに抱いてよ」

そのまま心奈の掌が俺の頬に添えられる。

「こんなこと……オマエらしくない」

「……そんなこと聞いてないっ……源課長みたいなおばさん抱けるなら、私のことだって抱いてくれたっていいじゃいっ」

心奈の目じりにはすでにこぼれそうなほどに涙が滲んでいて、体は小刻みに震えていた。俺は心奈を支えるようにして起き上がると毛布を引き寄せて心奈の身体を包み込んだ。

「……ばか。風邪ひくだろ……それに……こういうことはもっと心奈を大事にしてくれるヤツとしろよ」

「やだ……ひっく……世界がいいの。ずっとずっと世界だけを見てたの。好きなの」

「うん。分かってる……分かってたのにちゃんと突き放してやれなくてごめんな……真っすぐに俺を好きだって言ってくれて、いつもうっとしいくらい隣に居てくれて……当たり前すぎて気づいてなかったけど、父さんと母さんが死んだときも心奈は黙って俺の隣でバカみたいにはしゃいでくれて……いつの間にか寂しさが和らいでた。救われてた。ありがとうな」


「そんなこと言わないで……これからも隣に居たいの……世界が誰を好きでも構わないからっ……隣に居させて……ひっく」

心奈が俺の背中を痛いくらいに抱きしめて、俺の心臓の奥がぎゅっと痛む。俺は心奈の頬に掌で触れると溢れた涙をそっと掬った。
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