世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
ボソリと呟いた殿村の言葉に、思わず私は顔を真横に向けた。

「完璧主義で……強がってなかなか弱さを見せられない不器用な梅子には、あのくらいワガママでマイペースで良きも悪きもストレートに想いをぶつけられる御堂と相性がいいように思ってたけどな」

「……殿村……」

「それに、別れてスッキリしてるようには僕には見えないけど?無理してるだろ?」

殿村の大きな掌が私の頭をくしゃっと撫でる。私の瞳にはすぐに膜が張った。

「私っ……ごめ……ひっく……」

「うん、おいで」

殿村が私をそっと抱きしめると背中をトントンと摩る。

「頑張りすぎだな、恋も仕事も。もっとラクな方選べよ」

そうできたらどんなにいいだろう。恋も仕事もいつも一生懸命になりすぎて、いつも余裕なんて全然なくて、いっぱいいっぱいでそれでも大人だからと強がることしかできない。

大人って何だろう。身体は大人になっても心はいつまでたっても子供と大人が入り混じって、その境界線はいくら歳を重ねても、はっきりとは分からない。

「ひっく……苦しい……」

「うん……そうだな、しんどかったな。もう大丈夫だよ」

殿村の背中を摩る音と耳元から聞こえる殿村の鼓動にほっとしながら、気づけば私は殿村の背中に手を回していた。


「梅子……もう僕にしなよ」

私は一瞬呼吸を止めて殿村の言葉を反芻する。その言葉の意味はわかるのに言葉が出てこない。殿村が少しだけ身体を離すと、私の頬にそっと触れた。

「……ずるいよな」

「……殿、村?」

「梅子がどういった経緯で別れたのかわからないけど、梅子がまだ御堂に気持ちあるのわかっててそれでも……これが最後のチャンスだなって思ってさ。最低だよな」

丁寧に言葉を選びながら、苦しそうに言葉を吐き出す殿村に胸が苦しい。

「違う……最低で……ズルいのは私だよ……」

もう涙が止まらなくなった私を困ったように見下ろしながら殿村が、私のおでこに自身の額をこつんと当てた。
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