世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
殿村のマンションを出れば天気予報通り雨が降っていて、その勢いは強く視界が曇って見えるほどだ。

私は、タクシーを拾うとすぐに車内でスマホを操作する。

──『もう一度会いたい。話したいことがあるの。これを見たら連絡ください。自宅で待ってます』

世界に自分から会いたいとメッセージを送るのは初めてて送信ボタンを押すまで指先は震えていた。

何度も眺めてから、ようやくメッセージをおくると、私は車窓ごしに土砂ぶりの雨をみながらため息を吐いた。

(雨……ひどいな……雷鳴らないといいけど……)

私は再度スマホを覗き込む。世界に送ったメッセージはまだ既読にはなっていない。もしかしたらこのままずっと既読にならない可能性だってある。

世界を怒らせてばかりで、素直に自分の気持ちひとつ伝えられない私に世界が嫌気をさしてもおかしくない。

タクシーが自宅マンションに到着すると私は支払いを済ませて自宅玄関の鍵を回した。


「結構濡れちゃったな」

マンションのロータリーからエントランスに入る僅かな間だったのに、雨脚が強いせいでスプリングコートはかなり濡れている。私はスプリングコートを掛けると、スマホをテーブル置き、すぐにポットにお湯を沸かした。


──ヒヒーンッ

「あっ……」

マグカップにココアの粉末を入れながら鳴ったスマホに慌てて飛びつく。

──『心奈の家で話してた。もうすぐ帰るから』

(こんな遅い時間に……心奈さん家?)

すぐに窓の外から聞こえる雨音に呼応するように心の中にも雨が降り注いでいく。

自分だってつい先程まで殿村と一緒だった。挙句一瞬だが殿村に抱かれてもいいとさえ思ったくせに、世界が夜遅くにあの心奈の自宅で一緒にいた事実に悲しくなってくる。

ポタンと落ちた水滴がカーペットに染み込んでいく。そして窓の外に一筋の閃光がはしった。

「きゃっ……!」
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