世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
大きな隕石が落下したかのような雷轟(らいごう)に私は咄嗟に耳を塞いで蹲った。そしてリビングの照明がチカッと光ったのを最後に闇に包まれる。

(え、嘘……停電っ……)

すぐに片手は耳を押さえたまま、スマホを手繰り寄せる。雷による一時的な電波障害なのかスマホの液晶は真っ黒だ。

「……そんな……」

私のそんなか細い声を嘲笑うかのように窓越しの雷音は、お構いなしに稲光と共に空を埋め尽くしていく。私は震えだした身体をなんとか動かして、ベッドまで這っていくと毛布を頭からかぶった。

(…………すぐおさまるから……)

私は毛布を巻きつけたまま震えの止まらない体を抱きしめた。暗闇の中で雷音が聞こえるたびに体が跳ね上がる。将勝が事故で死んだと聞かされて病院で動かなくなった父を囲んで桜子と二人で泣いたことを思い出す。


──『大丈夫だよ』

ふいに、もうずいぶん昔に一緒に雨宿りした男の子の声が聞こえた気がした。切長の瞳で口が悪くてすぐ舌打ちするような生意気な子で、どう見ても私より随分年下で子供だった。

でもあの雨宿りの時、あの子のお陰で私は救われた。

──『雷ってさ多分空から、泣くな、負けるなって神さまが叱ってくれてんじゃないかな……だからアンタも泣くなよ』

そう言って男の子は両耳を押さえて泣いている私に覆いかぶさるようにして側にいてくれた。
あんな小さな子に慰められたのも守ってもらったのは、最初で最後だった。

「大丈夫……もうすぐ止む……負けないように……泣か……ひっく……」

もう泣きたくなんかないのに、涙は本当に嫌になるくらいコントールできずに溢れていく。

「……こわいよ……」

ポツリと呟いたその時、一際大きな雷の音が鳴り響き私は身を縮めて蹲った。

その小さくなった私の身体は、大きな掌で抱きしめられる。
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