世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
「そっか……仕事のことで真剣に悩むなんて梅子さんらしいね。ま、そんな梅子さんが好きなんだけどさ」

いつもなら素直に受け取る言葉が今日はズキンと痛む。世界が私の傍にいるために、自分の夢を諦める選択をしたことに申し訳なくて胸が苦しくなる。

世界が誰もいないエレベーターの中で私の髪をくしゃくしゃと撫でた。

「梅子さんならきっとうまくいく。大丈夫だよ。ただ、無理しないで」

「うん……ありがと。世界くんもね」

「俺は秘書の仕事も慣れたし、全然大丈夫」

世界が唇を持ち上げた。

「梅子さん、今日も夜、見積課まで迎えに行くから。今日俺作るよ。食べたいもの考えといて」

そしておでこにそっと唇を落とした。

「わ……えっと。うん……また夜に」

エレベーターが閉まる直前にもう一度振り返れば世界が二ッと笑って手を振った。私も小さく微笑み返す。いつも週の始まりも夜、世界が迎えに来てくれるのが楽しみで全力で仕事を頑張れる、ひとつのモチベーションになっていたが今日は違う。気分はここ最近で一番重い。

私は一番乗りで見積課に出勤するとパソコンの電源を点け、すぐにメール画面を開く。

指先を動かそうとして、一瞬その手を止める。このメールが私と世界の人生をきっと大きく変えることになる。

「梅子……決めたでしょう……」

私は大きく深呼吸すると文言を打ち込み、三度読み返してからメールを送信した。
< 265 / 291 >

この作品をシェア

pagetop