世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
「心配しなくても梅子にご執心のあの噛みつきワンコが、このまま梅子を野放しにしておくなんて考えられないね」

「だといいけど……」

私は湯飲みの中の緑茶を胃に流し込んだ。

「あ、梅子。さっき本部長以上の上役会議があってね、新しく海外マーケティング部が開設されることになって、その海外マーケティングの部長が明日着任するみたいだよ。見積課とは細やかに連携する部署になるから必ず挨拶しとけよ?ま、向こうから来るだろうけどな」

殿村が意味ありげに唇を持ち上げた。

「え?海外マーケティング部の部長?」

「あぁ、生意気なまだ若いヤツみたいだから噛まれないように気をつけろよ」

「ちょっと、噛まれるって……」

直ぐに犬耳と尻尾とつけてガルルッと牙をむき出しにする世界の顔がよぎる。私が誰かに噛まれるなんて思ってないが、もしそんなことがあったとしてバレたら世界に噛み殺されるだろう。

「恐ろしいじゃない……」

「ははは。冗談。じゃあまた、残業もほどほどにして今日は早く帰れよ」

「了解よ、殿様本部長」

「その呼び方やめろよ、梅将軍」

「もうー……殿村」

「ははは、おあいこだな。じゃあまたな」

殿村がにんまり笑って手を挙げると見積課からでていった。

私はスマホをそっと開く。あの日からお守りにしている世界からの最後のメッセージだ。


──『どんなに離れてても心は一緒だから』


「……そうよ、梅子!きっと大丈夫!」

(きっと……いつか迎えにきてくれるから……)

私は軽く両頬を叩くと図面を手繰り寄せ、再びパソコンを叩き始めた。
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