世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
(手、ちっちゃ……)

梅子の手を握り締めながら、時折夜風に運ばれてくる梅子の髪の匂いに鼓動が跳ねる。なかなか帰ってこない梅子を迎えに行って良かったと思う反面、きっと梅子はさっきの元カレとのやり取りを俺には知られたくなかったんじゃないだろうか。でもあんな顔をしてる梅子をどうしてもほおっておくなんて出来なかった。

「あの……勝手なことして怒ってますよね?」

マンションのエントランスについた俺は、おずおずと口を開いた。

「えっと……こっちこそ見苦しいっていうか、余計なもの見せちゃってごめんね」

「別に見苦しいとか思ってないです。ただ梅子さんがあんな顔してたから、ついすいません」

「あ、もう五年も前だし全然気にしてないから。ただ悪いんだけど……会社では内緒にしといてもらえると助かる」

梅子は俺から掌を解くとエレベーターのボタンを押す。さっきから梅子は俺の目を一度も見ない。

「アイツのこと、そんな好きだったんすか?まだ好きとか?」

さっきの男の顔を思い浮かべる。身長も高く顔も悪くなかった。別に見た目で負けてるとは思わないが、正直俺よりも大人な雰囲気だった。

「……そんな訳ないじゃない。後輩に寝取られた上に子供まで出来ちゃって、こっぴどくフラれてるのに……でも、御堂くんのお陰で仕事しか能がない寂しい女って思われなくてすんだから……ありがとね」

「俺は梅子さんをそんな風に思ってないですけど」

まだ今日一日しか梅子と一緒に居ないが、梅子の仕事ぶりは完璧だ。そしてそれだけじゃない。誰よりも仕事量が多いにも関わらず、金曜日という今日に部下たちを残業させないよう、さりげなく仕事が長引きそうな部下から仕事を引き継いでいたのを俺は見ていた。

「御堂くんにはわからないかもだけど、本当私には仕事しかないの。何よりも仕事が大事なの」

俺はエレベーターに乗り込むと隣の梅子の肩をグイと掴んだ。
まだ梅子はこっちを見ない。

「……じゃあ何でそんな泣きそうな顔してんの?」

梅子が黙って3階のボタンを押す。

「御堂くん……何階?」

「俺も3階なんで。で、そろそろこっち見てください」

「離して」

梅子の声がわずかに震えているのが分かった。梅子は3階に着き、エレベーターのドアが開くとすぐに駆け出していく。

「梅子さんっ」

俺は慌てて追いかけた。

「ついてこないでっ」

梅子が鞄から鍵を取り出して鍵穴に差し込こもうとする手を掴んだ。

「ちょっと、いい加減にして!あなたもさっさと家かえりなさいよっ」

(やっぱそうじゃん)
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