世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
「御堂くん、この和食創作店の和式トイレから洋式トイレへの改修工事に関する見積書の作成お願いできる?」

「あ、はい。承知致しました」

梅子は俺と契約交際を始めて三週間たったが、その態度は交際前とほとんど変わらない。特に会社では俺のことを御堂くんと呼び、休み時間であってもプライベートのことは勿論、雑談すらしない。

「えっと改修工事の見積もりは初めてよね。まず配管が壁抜きか床抜きかで取り付けられる便器、タンクが変わってくるから施工図確認してほしいの。あとは施工主が便器、タンクの色を特注色のハニーブラウン希望だから、あとで資料管理室から色見本カタログもってきて、商品開発部に納期問い合わせしておいてくれる?」

梅子は俺のパソコンを操作しながら施工図を印刷して手渡す。

「何か質問ある?」

ようやく俺と目線を合わせると、梅子が小さく首を傾げた。俺は黙ったまま施工図を眺めるフリをする。

「そうっすねー……」

梅子の上司として完璧な態度に俺はだんだん苛立ってくる。我ながら半ば強引な手口だったなと思うが、俺と梅子は間違いなく交際真っ只中のはずだ。それなのに俺はこの三週間、恋人である梅子の手すら触れてない。

(面白くねぇ……)

ちなみに梅子にLINEメッセージを毎日のように送っているが、梅子の返事はいつも想像よりもはるかにそっけない。毎晩食事にも誘っているが残業が多い梅子は仕事の帰り道に済ませることも多く、平日は一度もいい返事が返ってきたことはない。挙句の果てには、先先週の土日は高校時代の友達と会う約束をしているとかで会ってもらえなかったし先週土日は溜め込んだ暴れすぎ将軍のビデオを一気に見たいからと断られた。梅子は俺との時間をあえて持たないようにしている気がしてならない。

(俺はあんまり長く『待て』できねぇんだよっ)

「質問ね……ありまくりっすね」

「え?どこ?」

「例えば此処……」

俺は適当に図面を指さし覗き込む。つられて梅子が俺の手元の図面をのぞき込んだ。俺は口角を上げると、油断している梅子の頬に三週間ぶりに唇で触れた。
< 65 / 291 >

この作品をシェア

pagetop