世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
──『会ったのも三回目です』

世界の声が意思に反して天井から降って来る。

(そういえば二回目じゃなくて、三回目?)

記憶を数年前まで遡るが、やはり世界とは会ったこともなければ見たこともない。私は小さく首を振った。

「何真剣に考えてんだろ……どうせ三カ月の間だけだし、きっと年上と交際してみたいっていう若さ子特有の気まぐれよ……」

でも気まぐれで彼氏のフリをしてもと元カレを寝取った後輩から助けてくれたり、食事を作ってくれたり、休日に好きでもない時代劇を一緒に見に行ったりするのだろうか。

はじめは揶揄われてるのだとばかり思っていたが、世界の時折見せる真剣な表情に今までの世界の言動が、私をただ単に揶揄ってるだけだと言い切ることがどうしてもできない。そもそもあの見た目で若い女の子に不自由することのない世界が、私と付き合うメリットも私を揶揄うメリットも全く思い浮かばない。

「やめよ。終わり終わり……」

私は頭の中から、底なし沼のようなため息案件をかき消すと給湯室の扉を開けた。

「あれ、めずらし、誰もいない」

わが社TONTON株式会社は主力商品であるトイレは勿論ユニットバス、化粧台、システムキッチンも自社工場で生産しており商品のラインナップは幅広い。給湯室はそんなわが社の商品を気軽に試してもらう場であり、社員からの生の声をもとに、よりよい商品開発へ繋げるために他企業の給湯室よりはるかに広く作られている。

給湯室は二十畳ほどあり、わが社のシステムキッチンと化粧台がおかれていて、いつもは数人の従業員が利用しているが誰もいないのは珍しい。私はシステムキチンの大理石天板の上に湯飲みを置くと、戸棚から急須に緑茶の葉をいれてお湯を注いだ。

「はぁ……」

世界について考えるたびに、もういくつため息が転がっていっただろうか。

──ガチャ。

「失礼しまーす」

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