世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
「何言って……」

「あ、よかった。その顔だとまだなんだー?でも今後気を付けてくださいね、世界、噛み癖あるからー。この辺り」

心奈はネイルの施された人差し指を鎖骨辺りに当てるとにっこり微笑んだ。その笑顔に心の真ん中がズキンと痛む。

「……御堂くんから何聞いたか知らないけど……私は関係ないから」

自分で吐き出した言葉なのに、胸が苦しくてたまらなくなる。私は思わず胸元をぎゅっと握りしめていた。

「そうですか、よかったー。そうですよね、年が違いすぎておかしいですよねー。じゃあ遠慮なく、これからも世界を追っかけていこうと思います。ほんとにいいんですよねー?源課長」

「私の許可なんていらないでしょ」

「一応念のためですー。わぁい、源課長の許可もらっちゃった、嬉しいな。ありがとうございますー」

心奈はマグカップ片手にご機嫌で給湯室をあとにする。心奈の足音が遠ざかってから、私は痛んだ胸をごまかすように深呼吸を繰り返した。

「……ばかみたい……」

心奈の言うとおり、世界ははっきり言って女の子にモテると思う。そして見た目以上に彼自身の内面は魅力的だと思う。きっと女の子なら一度は好きになってしまうような、人を惹きつける力がある。

口は悪いが優しくて、なによりもいつも真っすぐだ。その真っすぐな想いをきちんと受け止める勇気もないくせに、これからもその想いが私だけに向けられたらいいのになんて、勝手に期待していた自分に気づく。

(年が違いすぎておかしい、か……)

「そうだよね……世界くんはまだ二十二……」

世間一般でいう二十二歳の恋愛対象として私は全然当てはまらない。そんなことわかっていたはずなのに、あらためて心奈から指摘されて傷つくなんて馬鹿げてる。

(こんなんじゃまるで……私は、世界くんのこと……)

「……好きになっても未来がないでしょ……」

私はこぼれてしまいそうなモノに気づかないフリをすると、湯飲みを抱えて見積課へと足をむけた。
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