【書籍化】バッドエンド目前の悪役令嬢でしたが、気づけば冷徹騎士のお気に入りになっていました
「ひどい……。まるで私が悪者みたいな言い方……」

 
 声を震わせて、さめざめと泣くエリザ。

 ひとの婚約者を取っておいて罪悪感の欠片もない様子に、若干いらっとする。
 
 私、何でも泣いて済ませようとする人が一番嫌いなのよ。

 なんて心の中で悪態をつくが、もちろん顔や声には出さない。こういう場合、取り乱した方が負けだ。

 と分かっているものの、やはり怒りは込み上げてくるもので。
 必死に感情を抑えつけているせいか、さっきからストレスで頭が酷く痛む。

 
 ……もういいわ。早く帰らせてくれないかしら。

 
「ビクトリア。君はいつもそうだ。冷めた顔で人を見下しながら、感情のこもらない言葉を並べ立て、自分の行いを正当化している」

 エリザの肩を抱き寄せたオスカーが、キッと私を親の仇のように睨んだ。
 
「君には、人情や愛情ってものがないんだ。婚約してから三年、君は一度だって僕を愛してくれなかった。その点、エリザは素晴しい女性だ。僕のことを『第二王子』としてではなく、オスカーという一人の男として愛してくれる」

「オスカー様……」
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