僕の欲しい君の薬指
何だか今日は時間の流れが遅く感じる。それに、この部屋が無性に広く感じる。どうしてそう感じてしまうのか、その理由を分かっているけれど私はわざとそれに気づかない振りをする。
檸檬紅茶をゴクリと流し込んだ私の耳元で「月弓ちゃんの声聴かないと疲れが癒えないだもん」と可愛い台詞が囁かれて、嬉しく感じてしまう私の頭はお花畑が広がっているのかもしれない。
「夜ご飯、美味しかった?」
「うん、天糸君が作ってくれた肉じゃがとっても美味しかった、ありがとう。天糸君は何食べたの?」
「ゼリー」
「え?それだけ?」
「うん。だって、月弓ちゃんが傍に居てくれないとご飯の味がしないの。だからゼリーしか入らなかった」
「…ちゃんと食べないと駄目だよ」
「じゃあ、今すぐ僕の元へ来てくれる?」
「……」
「あはは、冗談だよ。そんなに困った顔しないで」
それはそれは嬉しそうに声を弾ませる彼が、私の浮かべている表情を見事に当てた。ど、どうして私の表情が分かるのだろうか。
「月弓ちゃんの事だもん。何でも分かるよ、離れててもどんな表情をしているのかちゃあんと分かる」
“だって、愛してるんだもん”
私の思考までもお見通しらしい彼が放った言葉に、呼吸が乱れて息苦しさが増す。「愛してる」その言葉が重くて、窮屈で、それなのに私の心を高鳴らせる。