僕の欲しい君の薬指

彼からの「愛してる」を拒絶しないといけない義務が私にはあるのに、どうしてこんな肝心な時に言葉を詰まらせてしまうのだろう。


平々凡々な私とは違い、天糸君は芸能人で、キラキラ輝いているアイドルで、彼を愛してやまないファンが大勢いる。まだ十六歳の高校生だけれど、私の可愛い従弟はもう住む世界の違う遠い人なのだ。

天糸君の未来は更に煌びやかな物になるのだろう。そんな成功の道程を私如きのせいで頓挫させる訳にはいかないのだ。


そう云う物を抜きにしても、私達は従姉弟同士だ。「愛してる」なんて言っていいはずがないし、抱き締め合って寝たりキスをするなんてもっとしてはいけない行為で、背徳に塗れている。


私達がもうただの従姉弟ではなくなっていると私や彼の両親に知られるのがとても恐い。どんな表情をされどんな言葉を投げられるか恐くて仕方ない。

だから、こんな間違った関係は早く終わらせなくちゃいけない。


……そう思えば思う程、言い聞かせれば言い聞かす程、鋭い針で心臓を刺される様な痛みと苦しみに襲われる。だけどその原因を知ってはいけない気がして、私はまた自分の感情から目を背ける。そうしてまた、息が苦しくなる。



「明日もお仕事残ってるんでしょう?早く休んだ方が良いよ、おやすみ…「話逸らさないでよ、月弓ちゃん」」



通話を終わらせようとした私の言葉を妨げたのは、天糸君の冷たくなった声だった。


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