僕の欲しい君の薬指
サラダのはずなのだけれど、私の知っている野菜がパプリカしか見当たらない。初めましての食材ばかりだ。
「いただきます」
「ん、どーぞ。…って、俺が作った訳じゃないけどな」
未知の野菜をフォークで刺して口に運ぶ。その動作全てに、榛名さんは優しい視線を向けていた。次の一口の分へ手を伸ばしながら率直に味の感想を伝えれば、相手がこれでもかと唇を緩めて「口に合ったみてぇで良かった」と零した。
「この店、一回生の時に偶然見つけてさ、永遠にその時は来ないのかもしれねぇけどいつか大切な人間ができたら連れて来るって決めてた」
ゆるりと口角を持ち上げた榛名さんの言葉を脳が理解した途端、顔が熱くなる。間違いなく美味しいはずなのに、前菜の味もしなくなってしまった。動揺しているこちらを置いてけぼりにして、手を合わせた榛名さんが漸く食事に手を付ける。
「相変わらず美味しいな、ここ。ああでも、今日は月弓が一緒だから余計に美味く感じる」
容赦なく落とされる甘い台詞に、心臓が音を立てるのは必然だった。