僕の欲しい君の薬指
今日で会うのは三回目の相手と食事をして、果たして話題のネタが尽きずに済むのだろうか。そんな懸念を抱いていたけれど、どうやら私の杞憂だったらしい。次から次へ話題を投げてくれる榛名さんのおかげで、あっという間にデザートの時間に突入した。
「今日はチートデイだったから、月弓と食事できて嬉しさ倍」
「チートデイ?」
正面から飛んで来た聞き慣れない言葉に、スプーンを咥えたまま首を傾げる。舌の上で溶けたジェラートは苺の果肉がゴロゴロしていて甘酸っぱかった。
「ちょっと仕事で身体絞ってて、糖質制限してんの。チートデイって云うのは二週間に一度の暴食日の事」
「ずっと気になっていたんですけど、榛名さんのお仕事って訊いても良いんですか?」
「何、訊いてくれんの?それって月弓が少しは俺に興味を持つ様になってくれたって思って良い?」
「……そうなりますか…ね?」
「ん、そうなる。ていうか、そうする」
確かに私は榛名さんの事が気になっているのかもしれない。最初は何て綺麗な人なんだろうって思うだけだったけれど、今では榛名さんが何学部に通っているのかなとか、榛名さんはどうしていつもあのベンチに現れるのかなとか、質問がどんどん湧いてくる。
榛名さんの云う通り、私は彼に興味を持っているのだろう。
「羽生 天が表紙を飾ったこのファッション誌の来月号」
「え?」
「来週に発売するから見てみて。そしたら分かるから。それまでは秘密な」
「今教えてくれないんですか?」
「うん、だってその間、必然的に月弓が俺の事を考えてくれるじゃん?だから今は秘密」
何とも嬉しそうに表情を崩した榛名さんについて現時点で私が分かる事と云えば、榛名さんは私よりも何倍も上手だと云う事。それだけだった。