僕の欲しい君の薬指
こんなにもじっくりと相手の横顔を見るのは初めてで、余りの優艶さに視線が釘付けになってしまう。
「そんなに凝視されると緊張するんだけど?」
「へ?あ、す、す、すみません」
「もしかして俺に見惚れてくれてたとか?なんてな…「綺麗だったので、つい」」
クスクスと肩を揺らしている相手に図星を突かれた私は、正直に白状した。慌てて正面へ向き直して、双眸だけを滑らせる。視界の端で捕らえたのは、私の一言に吃驚した表情を浮かべている榛名さんだった。
「榛名さんの運転してる横顔に、気を取られてました」
無意識に見惚れてしまっていた自分を相手に気付かれていた事実に頬が火照っていく。バクバクと騒がしく暴れる鼓動を落ち着かせるべく深呼吸を繰り返す。
「も、もう前しか見ないです。本当にすみませ……」
改めてきちんと謝罪するべく開口したつもりだったのに、双眸に映り込んだ光景に台詞が途切れてしまった。私が捕らえたのは、私と同じ位頬を赤くしている榛名さんの顔だった。