僕の欲しい君の薬指
まるで紅潮した頬を隠す様に肘掛けに預けていた手で覆っている相手に、「どうしたんですか?」と訊ねようとした刹那、赤い頬を隠していた榛名さんの手が伸ばされてあっという間に私の視界を暗くした。
「今は見るの禁止」
「……」
「多分…いや絶対、俺の顔真っ赤だから見ないで」
自分の頬も充分熱いはずなのに、私の目元を覆い隠した榛名さんの手はそれ以上に熱い。
彼の熱い指先が、ドクドクと脈を打っている。車内に流れているお洒落な旋律に混じって確かに聴こえたのは「月弓は不意討ちするから心臓が持ちそうにないな」小さくそう吐かれた榛名さんの声だった。