僕の欲しい君の薬指



驚愕。唖然。困惑。私の状況を簡潔に表すのならば、その三つの熟語がぴったりだと思う。榛名さんに「これが俺の住んでるマンション」と案内された空間は、桁違いの絢爛さだった。


必要最低限のお洒落なインテリアしか配置されていないリビングはとても広く、まるで雑誌で紹介される庶民には縁のない上級者の部屋そのものだった。淡いグレーとホワイトで統一されていて、何処までも榛名さんの香りが漂っている。



「なーにボーっとしてんの?ひとまずここに荷物置くぞ」



その場で立ち尽くすして硬直している私を余所に、荷物を持ってくれていた榛名さんが何の躊躇もなく見るからに高そうなソファーにそれ等を置いてしまった。「ありがとうございます」と声を絞り出した私の隣に戻って来た相手が、鍵を目前でぶらぶらと揺らして見せる。



「はい、これがこの部屋の合鍵な。オートロックの番号はさっき教えた通りだし、月弓の部屋はあの扉から出た廊下の一番奥。ベッドはもう準備してあるから好きに使って」



本当に私は今日からここに住んでも良いのだろうか。東京の景色を一望できる大きな窓や、高い天井を見れば見る程自分の場違い感が浮き彫りになる。



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