僕の欲しい君の薬指

同時に私達の視線が榛名さんへと伸びる、。。銀髪を掻き上げているその人は、怪訝な表情を崩していない。私、天糸君の順番で左右に双眸を二往復させた後、相手は更に深刻な色を濃くさせた。



「何、珠々」

「お前と月弓の関係にどんな名前が付くのかは分からない。分からないけど、これだけは言える」



“お前と月弓の関係は異常だ”



オブラートに包む事なく放たれた一言が、ぺしゃりと無慈悲に私の心を踏み潰した。



…心臓が痛い。胸の奥の奥が痛くて堪らない。

自覚はしていた。異常。その通りだと思う。初めて赤の他人に彼との関係を指摘され、やっぱり私達は可笑しいのだと再認識させられる。



「月弓、目を醒ました方が良いんじゃない?」

「榛名さん…」

「二人の関係が歪で狂っている様にしか見えない」

「でも…「俺にはまるで、月弓が天に支配されているみたいに映るんだけど?」」



彼の腕の中で拘束されている私の肩を掴んだ榛名さんが視界を独占した。真剣な面持ちをしている相手からベルガモットの香りが舞う。仄かに唇の端を上昇させた相手の言葉で脳内が錯乱を起こす寸前だった。


突如として、私の目の前が暗闇に覆われた。


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