僕の欲しい君の薬指


「月弓に良い所見せようって思って気合入れて撮影に挑んだんだけど、どう?」

「え!?私にですか!?」

「ん、月弓の為に頑張った」



頬杖を突いてこちらの感想を待っている相手は、何とも糖度の高い笑みを咲かせている。その美しさは、大理石のテーブルを彩っている麗しい花瓶に活けられた花に引けを取っていない。


雑誌の表紙を飾れる実力のある彼が自分の傍に居る。この信じられない状況を私はまだ昇華できていない。



「…綺麗です。とっても、綺麗です。どの榛名さんも凄く綺麗です」



己の語彙力の無さに絶望すら覚えた。どうにか紡げたのは実に陳腐でありきたりな感想で、榛名さんの写真の良さを一つも言葉で表現できていない。これでは、仮にも私の為と云ってくれた相手に申し訳ない。


罰の悪い表情を浮かべた私とは裏腹に、榛名さんの唇が甘く緩んで頬が薄っすらと染まっていく。



「そんなド直球に褒められると思ってなかったから照れるな。……でも…うん、嬉しいわ。ありがとう」


“月弓に見て欲しかったから、本当に嬉しい”



相手が吐いた台詞にどんな反応をするのが正解なのか分からなくなった私は、火照る顔を隠す様に俯く事しかできなかった。


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