僕の欲しい君の薬指



「これからは珠々って呼ぶ事。約束な」



嬉々とした様子の相手にコクリと小さく頷いて応える。苗字ではなくて下の名前を呼ぶ。たったそれだけの変化のはずなのに、何だか一気に親しい間柄になったみたいだ。


この新しい経験が余りにも新鮮で、胸が躍っているのがありありと分かる。友達…って云うのは流石に烏滸がましいかな、…でも、そう思いたいな。


夢心地にも似た気持ちを抱えたまま、私は用意して貰った部屋に案内された。初めて中に入った感想を述べるとするならば「こんなに広い空間を使わせて頂いていいのだろうか?」だろう。


「ドレッサーは月弓に必要かもだから買った」と衝撃的な発言をあっさり放った珠々さんは、私の荷物を置いて新曲を覚えないといけないからとすぐに去ってしまった。

こんなにも贅沢な空間を私が使わせて頂いて本当に良いのだろうか。私のマンションのリビングと殆ど同じ規模の部屋をぐるりを見渡して、恐る恐る荷解きを始める。


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