僕の欲しい君の薬指
妃良さんには、本当に全てがお見通しなのかもしれない。聰明で他者からの干渉を良しとしない天糸君の胸の内をここまで熟知している時点で、妃良さんに尊敬の念を抱く。
「天に愛する人がいても、僕は動揺なんてしないし驚きなんてもっとしないよ」
それもとっくの昔から知っていたみたいな様子で、何を今更と云う空気すら醸し出している。誰にも打ち明けられない苦悩と云う名の十字架だと思い込んでいたのに、まさかこんなにも呆気なく露呈してしまうなんて…。
視界の端に映る珠々さんも、突っ伏していた顔を上げて妃良さんの発言に無言のまま目を丸くさせている。
髪を後ろへ流した手でそのまま頬杖を突いた相手が、じーっとこちらを視線で刺す。グサグサと穴が開きそうな程に突き刺さる視線に、皮膚の表面がジリジリと痛くなる。
正座した膝の上に行き場を失くして置かれた自らの掌には、冷や汗が滴っていた。