僕の欲しい君の薬指
「月弓ちゃんは天を愛していないの?」
「……」
私は口を噤むほかなかった。愛してる。きっと、この世で一番、どんな彼の熱狂的なファンよりもずっとずっと、私が彼を愛している。
大きな罪悪感と十字架から目を背けて逃げてきた癖に、いっちょ前に独占欲を滾らせている自分が恐ろしく醜い。
「アイドルとしての輝かしい道を自分が邪魔したくない。そんなクソみたいな考えをしているのなら、僕が月弓ちゃんの頬を引っ叩いて目を醒ましてあげようか?」
「え?」
鋭利な言葉に責め立てられ、心臓の奥が痛くなる。しかしそれ以上に、相手がどう云う意図でそんな言葉を放ったのかが分からずに戸惑った。
まだ数往復の会話しかした事のない妃良さんだけど、それだけでも十分に相手のアイドルとしてのプロ意識の高さを思い知ったし、この人の芸能人としての完璧な立ち振る舞いに圧倒された。
だからこそ、自分に向けられた言葉が些か妃良さんらしくない様に思えた。だって、これではまるで私の天糸君に対する禁忌的な感情を彼が許しているみたいだ。
ぐしゃりとあからさまに顔を崩して「お前何言ってんの」と投げたのは、艶のある低い声。ほんの微かに怒気も含まれているそれに、受け取った妃良さんは一切動じない。寧ろ微笑で美しい顔を飾り付けている。