僕の欲しい君の薬指


珠々さんが私の腹に容赦なくかぶり付く。ピリピリと弱い電気が走った感覚を抱いた次の瞬間には、私の肌に赤い印が刻まれていた。



「んっ…」

「俺にしろよ、月弓。俺なら従姉弟とか云う余計な柵もないじゃん」

「珠々…さん…」

「高校生のあいつとは違って、俺は社会的にもちゃんとした大人だから。月弓をちゃんと護ってやれるよ。あいつみたいに月弓を不安にさせたりしない。俺だったら、月弓も背徳感や罪悪感を背負わずに済むんじゃねぇの?」



私の抱えていた息苦しさを的確に突いてくる相手は狡い。まるで悪魔の囁きだった。その通りなのだ。珠々さんを選べば、従姉弟同士の恋愛なんて云う世間からの好奇の目を向けられる事もないだろう。

自分の両親や、天糸君の両親にどう顔向けすれば良いのか苦悩する必要だってないだろうし、まだ高校生の相手と恋路に走る事で周囲からあらぬ噂を立てられる心配もしなくて良い。


私と天糸君が恋愛関係を築いて愛し合えたとしても、待っている道程は未知の険しさと苦痛だらけなのだ。だから私は、自分の感情に目を逸らし続けてあの子から注がれる激しい愛を躱してきたはずなのだ。


それなのに、私はとうとう気でも狂ってしまったのだろうか。どれだけ息を吸っても吸っても息苦しい日々になろうとも、首を絞められているみたいに辛い人生になろうとも、重過ぎるあの子の狂った愛に縛られ自由を消失する事になっても、それでも構わないと思ってしまっている。


あの息苦しさに心地良さを感じてしまっている。


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