僕の欲しい君の薬指


被虐体質なのだと言われてしまえばそれまでなのだろう。反論の余地もない。足掻いても足掻いても沈むだけの底のない海に自ら溺れに行くのと同じなのだから。


無防備だったが故にこんな状況をみすみす招いてしまった。この事実をあの子が知ったらそれはそれは激昂するのだろう。「お仕置き」だなんて云って平然と私を数日間も監禁するのだろう。もしかすると、永遠に外に出して貰えなくなるかもしれない。



でももう、それでも良いから天糸君のお貌を見たいな。天糸君の好きにされたって平気だから、天糸君が無事なのかこの目で確かめたい。ちゃんと自分の手で触れて、天糸君の温度を感じて、生きているのだと確認したい。



「月弓、俺を見ろ。他の奴の事なんて考えるな」

「…んっ」



一気に現実に引き摺り戻したのは、耳元で甘く溶けた低い声。耳朶を甘噛みされたせいで、鼻から変に高い声が抜けてしまう。私の視界を独占するのは、サラサラな銀髪越しにある端整な顔。

若干の鋭さが含まれている瞳の中にはやはり、普段の彼の余裕が見当たらない。


私の前で珠々さんが自らの纏っていたシャツを脱いで、床へと投げ捨てた。目前に現れたのは、彫刻を彷彿とさせる美しい肉体だった。六つに割れている腹筋は均衡が取れていて、どれだけの努力が積み重なっているのか計り知れない。



絡んで縺れた視線が解けない。珠々さんの首を装飾しているシルバーのシンプルなネックレスが、鍛えられた肉体美を更に強調している様だった。


< 199 / 259 >

この作品をシェア

pagetop