僕の欲しい君の薬指
一度見たら脳にしっかり刻まれる美しさを持っている彼は、グループ最年少の羽生 天君。十六歳。
『もしかして羽生君、西洋の絵画から飛び出して来た?』
『ルーヴル美術館から逃げて来たんじゃないの?』
MC以外の芸人さんも口々に羽生君を褒めている。やはり彼は、芸能界の中でもひと際美しくて見た者の心を捕らえてしまう魔性にも似た魅力の持ち主らしい。
分からなくもない。画面の向こう側で唇に弧を描いている羽生君は、ただその場に立っているだけで画が成立している。
『それ、地毛なの?』
『はい。父と母がそれぞれハーフなので、こうなりました』
『こうなりましたって…随分他人事じゃない!滅茶苦茶凄い事よ!?!?』
『遺伝子には感謝してますね』
『とんでもない遺伝子だよ本当に。競馬で言う所のディープインパクトよ』
愉快なオープニングトークに、スタジオが笑いに包まれている。観覧席からは「天くーん!」としきりに彼を呼ぶ女性ファンの声が響いている。
遠い世界の人。同じ日本人とは思えないし、同じ人間とはもっと思えない。番組が盛り上がっていて、ファンでもないのについつい魅入ってしまう。頬杖を突いてすっかり地獄みたいな状況を忘れて番組を愉しんでいると、突然背後から甘い香りに抱き締められた。