僕の欲しい君の薬指




紅く浮き出る痕が一つ、また一つと増えていく。それはまるで、己の身体が珠々さんに喰らい尽くされるまでのカウントの様に思えた。

他の人に身体を貫かれる。考えただけでも眩暈がしそうだった。気分が悪い。胃がムカムカとして何かが込み上げてそのまま逆流してしまいそうな吐き気の波が容赦なく押し寄せた。



どれだけ私が拒絶をしても何てことなさそうに、何度も何度も攻めて来たあの子に私はいつも口ばかり「嫌だ」と訴えていたけれど、本当は満更でもなかったのだと思い知る。だって、天糸君にどんなに甚振られようとも、嬲られようとも、弄ばれようとも、私の身体は熱を孕んでトロトロと彼を求める蜜を溢れさせるばかりだった。


それなのに今はどうだろう。眩暈と気分の悪さで頭が朦朧とする。それは言葉にするよりもずっと明白な、身体が訴える真の拒絶だった。あの子とは違う人間の体温に抱かれる現実味が濃くなっていくのに比例して、悪寒が酷くなる。



胸焼けしてしまいそうな甘ったるい愛撫が注がれて、徐々に…されど着実に衣服を脱がされていく私は、いよいよ本当にこの人と身体を重ねてしまうらしい。身体は全力で拒絶反応を示しているにも関わらず、まるで声を奪われたかの様に言葉が出ない。


恐怖のせいでやけに乱れた呼吸だけが、口から漏れるだけだった。



「脅えてる顔すら可愛いのな。狡いわ」



ただじっと恐怖に耐えているだけの私の頬に手を添えた相手が、困った様に眉を下げてひたすら糖度の高い微笑みを湛えた。


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