僕の欲しい君の薬指
相手の手はすっかり熱くなっていた。パチパチと瞬きをして唖然としている私を落ち着かせる様な手付きは、微かながらにいつもの珠々さんのそれに戻っている。
「悪い、恐かったな」
「……」
「月弓を俺の物にする好機は今だって分かってんのに、俺にはやっぱり無理だ。月弓を泣かせてまでする事じゃねぇ」
“って、ここまでしておいて何言ってんだって感じだよな”
自嘲的にフッと笑った珠々さんが、驚いたまま硬直している私の額に貼り付いた前髪をどけて、そこに触れるだけのキスをした。
「珠々さん……」
「ごめん月弓、俺今全然余裕ねぇの。少し油断したら月弓の事本当に犯しかねない位に理性がボロボロ崩れてる。だからこんな情けない俺は、あんま見ないで」
ソファに置かれていたブランケットを広げて、私の身体を包みながら痛く苦しそうな笑顔を貼り付ける彼に、心臓がチクチクと何かに刺される。
私の上に跨っていた身体を退かして、ソファから降りた珠々さんはすぐに床に座り込んで頭を抱えた。